業務報告はキスのあとで
しかし、ここは小さな資料室。数歩下がったところで、私の背中は資料棚に当たってしまった。
背中には資料棚。そして、目の前には真っ直ぐ私を見つめている平岡さん。
「前置きとか、長々と話すのとか、そういうの嫌いだから単刀直入に言うけどさ」
状況が全く理解できていない混乱状態の私を構うことなく、勝手に話を進めている平岡さんは、一体、次に何を言い出すのだろうか。
こんなところでいきなり迫られて、これから〝単刀直入〟に何かを言われるって、私、もしかして何かしてしまったのだろうか。
「あの、私、何かお気に召さないことでもしてしまいましたか……?」
恐る恐る、平岡さんに問いかける。
初日から上司に目をつけられてしまうなんて、本当に最悪だ。
もしかして、私の挨拶の仕方ががダメだったのだろうか。それとも、チャラ男とか思ってたのがばれたのだろうか。
なんて、そう賢くもない頭を使って試行錯誤させている私の頭上から「え?」という驚きの声が降ってくる。その一言に、つい私も「え?」と同じ様に返してしまった。
「まさか、本当に覚えてない?」
次に発された平岡さんの一言に、私は目を丸く開き、首を傾げた。