携帯は『広瀬修二』と表示して震えた。

「祥ちゃん、電話よぉ」

隣に座っていた晴香さんがほぼ同時に気がついて教えてくれる。

見逃さないように、机の上に置いておいて正解だった。

晴香さんに断って席を立ち、急いで盛り上がっているお酒の席を後にする。

電話に出ると、近くまで来ているはずだが、店が見つからないとのこと。

「大通りを一本入ったとこで、コンビニを曲がったら店が見えるはずなんです。わかりづらくてすみません。店の前まで行きますね」

歓迎会の幹事に名乗りを上げて、やっと広瀬さんの連絡先を手に入れた。

新しく入った人のフォローができるようにしているシフトでは、元々あまりかぶらない勤務がさらにかぶらなくなり、年度が変わって忙しいのか、すれ違いもわずかな回数しか持てずにいたところでの歓迎会。

二つ返事で参加表明をしてくれた広瀬さんに会うのを楽しみにしていた。

店の外に出ると店内の熱気との差に思わず腕をさする。

4月下旬に入ったとはいえ、夜になると7分袖1枚では肌寒かった。

慌てて席を離れたので、羽織ってきた上着は置いてきてしまったし、広瀬さんが近くまで来ているのはわかったから、もうすぐ来るはず。

『あ、言ってたコンビニあったよ。ココ曲がるんだね』

「曲がったら、わかると思うんですけど」

少しでも大人っぽく見えるように履いたヒールのあるパンプスで足踏みをしながら、指定したコンビニのある方に首を伸ばす。

すぐに携帯を片手にきょろきょろ見渡しながら角を曲がってきたスーツ姿の男性が現れて、くすりと笑う。

たぶん広瀬さんだ。

「私は広瀬さんらしき人見つけました」