閉店までのシフトで、スタッフ全員で裏口から出て、それぞれにお疲れ、と声を掛け合って解散になった後だった。

私と川原が、それぞれ自転車と原付を回収して愛車に跨る直前。

二人になったところで川原から切り出された。

「祥子さん、ちょっと聞いていいっすか」

「うん、いいけど。どうしたの、改まって」

自転車のサドルにお尻を乗せて、川原に顔だけ向ける。

川原から二人きりになったタイミングで、敢えて私にしか聞けないことなんて、ゆかぴょんのことしかない。

ヘルメットを被る川原が、思ったより深刻そうな顔をしていて、安請け合いしたかと少し後悔する。

「刈谷先輩と、連絡取ったりしてます?」

川原は顎下に来るヘルメットのベルトを窮屈そうにいじりながら聞いてくる。

思わぬ質問に肩透かしされた気分。

川原の真剣な顔にそぐわない質問である気がして、引っかかる。

「ほとんどないよ。そもそも学年違うし、学校も違うようになっちゃったし、別れてからは全然」

「そうっすよね。すんません、変なこと聞いて」

川原が、わざわざ二人きりになって聞いてくるほどの質問でもなく、相談でもないことに疑問を持つ。

バイト中は特に変わった様子もなかったし、キッチンの仕事も戦力になって注文もこなせていたし、何回かホールに出て接客もしていた。

体調も悪くなさそうだったけれど、笑顔も元気もない川原の様子に心配心が持ち上がる。

ゆかぴょんと別れてしまったか。

刈谷先輩の名前を出してくることといい、相談相手を私に選んだことといい、導き出されるのはコレしかない。

川原はゆかぴょんを大事にしていたし、ゆかぴょんからは川原の話をずっと聞いていたのに、どう転ぶかわからないものだ。

「どうした、力になるよ?」

川原はすがるような目をしているのに、吸った息をそのまま吐いて言葉を紡がず、弱弱しい笑顔を見せて首を横に振る。

川原のいじらしさに、せめて慰めてあげようと頭を撫でるべく手を上げた。

本人がまだ言いたくないなら無理に口を割らせる必要はない。

いつもなら撫でやすい位置まで下がるはずの頭が下りてこなず、首をかしげる。

「祥子さんだけですよ、俺の頭いつまでも撫でるの」

困ったような顔で見下ろされる。

川原の顔の前で止まっている手のやり場にこちらも困って、手の乗り場を要求する。

「屈んでくれないの?」

川原の笑顔が深まり、口にはしない拒否に、川原の頭を撫でるのは諦めて、自転車のハンドルを握る。

こちらとしては、ちょっと物足りない感じ。

川原と言ったら、頭を撫でてあげるのと嬉しそうにするのを見るは1セットだったから。

慰めにならなかった行為だったと気付いて申し訳ない気持ちが生まれる。