「なぁに、じゃあ、かなっぺと後輩君、付き合っちゃうわけぇ?」

先日の川原と由香里の一件を話すと、恋バナ大好きな晴香さんはお酒も入って絶好調。

高島家のリビングを二人で占拠し、晴香さんは女子力の高い可愛らしいパジャマ姿で、次のチュウハイを開ける。

晴香さんの家は実家だが、親が急な出張でいないとのこと。

第一候補、彼氏の誠さんはどうしても抜けられない実験があるとかでこれず、白羽の矢が立った私が、一人で過ごせない超絶寂しがりの晴香さん宅にお泊りと相成った。

帰らなくてもよい女子会ほと楽しいものはない。

「ないと思うな。バイトで会ったけど、かなっぺ超怒ってて、盛大に川原の愚痴を聞かされたし。まあ名前本気で間違えられたら私も怒るけど、当事者じゃないから、かなっぺの由来しらなかったんだと思って、もう笑いをこらえるの大変で」

今思い出しても、別れ際の川原の不安そうな顔を思い出す。

あてずっぽうの名前を言ったことを指摘されるのをわかってはいるが、ゆかぴょんが立ち去るまでは誰も何も言えないし、自分の失態をわかっているなら尚更祈るような気持ちだったに違いない。

「それで、後輩君と元カノちゃんの騒動は納まったのぉ?」

「たぶん。そのお礼がコレ」

川原から感謝の印としてもらった期間限定ショップのオリジナルチョコを指差す。

意外とおしゃれな選択に感心した。

すでに半分は私と晴香のおなかに納まっている。

ガタイのいい男が、恥じらいながら可愛らしいラッピングの包みを手渡してきた姿は、バレンタインの決死の告白をする女子高生のようで、思い出して笑う。

この間の一件で由香里と川原のごたごたも、ようやく収束しそうだし、川原もそれを実感しているからの貢物だろう。

あの日、由香里は川原が見えないところまでほんの少し走っただけで、見つけてほしそうにしゃがみこんでいた。

きっと由香里は慰めてほしかったのだろうし、ご希望の悲劇のヒロインになれたので、ある意味満足の別れになったようだ。

悲劇のヒロインを完成させるには、慰め役の女友達が必要だから、私がしばらくその役を買って出て、その場で高校の友人たちとの女子会をするように連絡もさせた。

ついでに失恋の痛手を電話越しに泣いて訴え、時間は掛かったが、気持ちを吐き出した分すっきりしたのだろう。

ご飯を食べて落ち着かせ、別れ際にはとても感謝された。

そういえば、携帯を出したついでに川原のデータも消去させた。

人の恋路を邪魔するわけじゃないし、積極的に首を突っ込みたいわけじゃないけれど、人に迷惑をかけるのだけは止したほうがいい。

趣向や愛情表現は人それぞれ。

迷惑をかけなければ自由にしてもらって構わない。

小手先の業で、データ復元とか連絡先を探されたりしたら手に負えないが、目先の迷惑はこれで阻止できた。

指示していない男友達に電話していたので、ちょうどタイミング的にも新しい彼候補か。

あちこちに電話をかけている間、ただ傍にいて指導するだけで、意外とあっさり泣き止んだので、そろそろ私の仕事も完了でいいだろう。

唯一、由香里が気になることを言ったが、それは心の中で留めておく。

自分から、晴香さんにからかわれるネタを提供する必要はない。