「はあ!?」
「香世、お父さんにいくらあげたの」
「・・・40万」

俯いたまま渋々答えた私に、お姉ちゃんは一言「ばか!」と言った。

「なんであの人にお金あげたの!」
「だって、お金ないって言うし・・・かわいそうだったから」
「かわいそうって・・・あんたねぇ。それはあの人の自業自得でしょ?」とお姉ちゃんは言うと、わざとらしくため息をついた。

「それより香世。なんであの人に会ったの」
「・・・昨日、駅で会って・・・」
「駅って、どこの」
「会社(タハラ)の最寄り駅。お父さんも仕事帰りだったって」
「待ち伏せしてたな、あいつ」

怒り心頭なお姉ちゃんは、お父さんのことを「あいつ」呼ばわりしている。

「月曜に会ったとき、お金払うどころか、逆に私にお金せびったくらいだからね。もちろん断ったけど。だからあいつ、ターゲットを香世に移したか」
「・・・ごめん」
「お金のことはいいの。香世のお金なんだから好きに使っていい。でもね、もう二度とあの人にお金をあげちゃダメよ」
「そうよ。あいつのことだから、あんたならお金くれると確信して、またせびりに来るかもしれない・・うん、その可能性高いわ」
「え!?私、“これで終わり”って言ったし、お父さんも“分かった”って言ったよ?」
「そんな口約束なんて、いつでも無効にできるわよ!いい?香世。あの人に同情してもムダなだけ。もう関係ないって割り切って、二度と関わらないこと。分かった?」
「私・・・お父さんがいくら借金作ったか知らないし、結局お父さんの借金が原因で別れたってだけしか知らない。お母さんはお姉ちゃんを頼って、何でも話してるみたいだけど、私には具体的に何も教えてくれないから分かんないよ!」
「香世・・・」
「あれでもあの人は私のお父さんだもん!ちゃんと生活できてるのか気になるし、お金なくてかわいそうって思っちゃいけないの?」
「思うのは勝手だけどさ。あの人に関わっても自分の人生棒にふるだけだよ」
「でも香世が言うことも一理ある。ごめんね、香世。お母さん、香世にはあまり話してなかった。心配かけたくなかったからだけど・・・間違ってたね」

「座って」とお母さんに優しく促された私は、力なくダイニングチェアに座った。


「お父さんの借金、500万以上はある。これはお母さんが知ってるだけだから、たぶんもっとあると思う。あの人、返済するのにお母さんたちのお金をあてにしてたようだけど・・・香世や美香が一生懸命働いて稼いだお金を、ギャンブルで作った借金返済のためなんかに使ってほしくなかった。だからお母さんは離婚に踏み切って、お母さんはもちろん、あなたたちまで借金の肩代わりをさせられないように、親子の縁も切らせた」
「だからあの人には、うちらの住所や電話番号を知られないようにしてるのよ。あんた、知られてないよね?」
「大丈夫。お父さんが電車に乗ったのを見届けて、私、電車に乗ったから」

お父さんは、「友人の借金保証人になった」って言ってたけど・・・本当はギャンブルで借金、か。

嘘つき。

そういうわけで、お父さんに対して、静かに怒っているお母さんは、「慰謝料はいらないから、もう二度と美香子と香世子には連絡取らない、会わないと約束してください」と書いた手紙を、お父さんへ送った。


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