「約束」したとおり、翌日は、有澤さんがアパートまで送ってくれた。
23日の祝日は、コバちゃんと会うことになっていたけど、給料日直前でお小遣いがあまりないから、断りの電話を入れた。

だけどコバちゃんが、「それならうちで過ごそう!」と言ってくれて。
閑静な住宅街にある立派な邸宅で、コバちゃんと、コバちゃんの後輩の「あっちゃん」こと足立さんの女3人、ワイワイ楽しく「ちょっとだけ早いクリスマスパーティー」をした。

そして12月24日のクリスマスイブ。
石ノ森製菓堂のクリスマスケーキを、仕事帰りに水沢さんから受け取った。

「ありがとう!えっとお金・・・」
「それなら有澤からもらってるよ」
「・・・え?」

私は、つい咎めるような視線で、横にいる有澤さんを見てしまった。

「おまえ、金ないんだろ?」
「でもケーキ代は、お母さんからもらったもん」
「じゃあそれはお母さんに返すか、おまえがもらっとけ」
「またそんな・・・!」

どうしよう。
困った顔で、手に持ってるケーキが入った箱と、有澤さんを交互に見る私に、「俺はどっちからでも金もらえればいいから」と、水沢さんが言った。

うーん・・・水沢さんとしてはその通りなんだろうけど・・・。
そんなこと言われても、何も解決しないじゃないの!

「じゃーこれは、サンタからのクリスマスプレゼントってことにしとけ」
「ええぇ?!」
「いいだろ?」
「う・・・ん。ありがと、有澤さん」
「ノーノーノー。“ありがとう、サンタさん”と言え」

わざとおどけた口調で、有澤さんからそう言われた私は、クスクス笑いながら「ありがとう、サンタさん」と、“にわかサンタ”にお礼を言った。





そして、有澤さんが買ったブッシュドノエルを半分頂戴するため、有澤さんは今日も家まで送ってくれただけじゃなく、今回はケーキがあるので、うちの中まで上がってもらった。

「おじゃましまーす」
「はい、どうぞ。えっとこれ。スリッパ」
「ありがと」

うちのアパートは、有澤さんが住んでいる公団の2LDKと、間取りはほぼ同じだけど、有澤さんちのほうが広いと思う。
そんな手狭な室内を、有澤さんはキョロキョロと見渡している。

「誰もいないのか?」
「うん。お母さんは職場の人たちと食べて帰るって。お姉ちゃんはもうすぐ帰ってくるよ」
「あ、そ。お母さん、仕事してるのか」
「タバコ製造のパートをね、私が高2の頃からずっとしてる。今にして思えば、お父さんの借金を返すためだったんだろうね」

職場の人たちとは、すごく仲良くしているお母さんだけど、自分がタバコを吸うわけでもないのに、タバコのにおいがつくことが、この仕事の唯一の欠点だと言っている。
お父さんと離婚した今、もう借金を返すために働く必要はないんだけど、生活費を稼ぐために仕事が必要だから、今すぐ辞めるわけにはいかない。
私とお姉ちゃん、二人の稼ぎでどうにかなると思うんだけど、お母さんはそれをあてにはせず、「働けるうちは働く」と、前言ってたな。

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