1月5日、タハラ商事の仕事始め。
数日間の休みだったのに、すごく久しぶりに出社する気分だと思いながら、私は会社の人たちに「あけましておめでとうございます」と挨拶をしながら、朝のお茶を配った。

「有澤さん。あけましておめでとう」
「おう。あけましておめでとさん。今年もよろしくな」
「こちらこそよろしくです」
「なあ、すず」
「はい?」
「今日か明日、予定あるか」
「ううん。どっちも空いてるよ」
「あ、そ。じゃー明日、うちで同期新年会しよ。渡したいもんあるから」

というわけで、翌1月6日、有澤さん宅で横浜支店同期新年会が開かれた。


「有澤さんって料理できるんだ」
「テキトーだけどなー、一応大学んときから一人暮らししてるし」

と有澤さんは言いながら、香りづけに火を通していたガーリックを、フライパンから菜箸で取り出すと、ゆであがったスパゲティの麺をフライパンに移した。

もう火は止めてるけど、ジャッという音があたりに響き渡る中、菜箸で麺を絡ませている有澤さんの手つきは慣れたものだ。

私は「一人暮らししたい」と思いながら、実際のところ、料理をはじめとした家事全般は、一緒に住んでいるお母さんに任せっぱなしだ。
ホントに一人暮らしをしたいなら、貯金に励むとか、家事をするとか、そういった具体的な行動を起こさないと。

「これがめんたいか」
「正確には“くずめんたい”って言うんや」
「くずめんたい?」
「明太子の端の部分とかの寄せ集めで、最初から形が崩れてるから、“くず”めんたいって名前なんだと」と有澤さんから説明を受けた水沢さんと私は、「へえ」と感心の声を上げた。

「俺はいっつもこっちもらってんだ。使いやすいから」
「なるほどなー」
「すず、そこにある大葉取って」
「はいっ」

その「くずめんたい」を麺に絡ませた後、細かくみじん切りにした大葉をざっと混ぜれば、めんたいスパゲティの出来上がり。

私たちは各自お皿を持って、ダイニングテーブルへと移動した。


「おいしいっ!」
「だろ?大葉とガーリックはあってもなくてもええし、オリーブオイルの代わりにバターを使えばコクが増す。とにかく、めんたいさえあれば簡単にできるけん、家でも作ってみ」
「うん!ありがとね、有澤さん」

めんたいスパゲティを食べてもらうこと。
そして、実家へ里帰りした時のお土産のくずめんたいを、水沢さんと私に渡すこと。
だから今回、有澤さん宅で新年会が催されたというわけだ。

「有澤の実家、福岡だったよなー」
「ああ。それに母さんが明太屋で販売のパートしとーけん、“これ持っていきー、あぁあれも”って、明太グッズいっぱい持たされた中に、なぜかスパゲティの麺まで入っててさ。“かーちゃん、なんでやねん”ってツッコミ入れたはいいが、とにかく消費せなあかんいうことでなー」と、嘆かわしく言う有澤さんがおかしくて、水沢さんと私は、クスクス笑った。

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