【短】ウラハラ彼女


どうしてここまで僕が情けをかける?



なんで……





「ねえねえ、三橋くん」


「…ん?」


「あたしが怪我したらまた手当てしてね!」



傷口に貼った絆創膏をさすって、心底嬉しそうに。


そして無邪気に笑う彼女を見て気付く。



……ああ、そうか。


彼女が僕の目の届く範囲でしか問題を起こさないからだ。


教師にも、生徒にも。



思えば彼女は僕以外には迷惑をかけていない。


それを狙っているのかいないのか……




とにかくこの女は、要領がよくて抜け目がない。


言ってしまえば器用なやつなんだ。




僕はその時、ようやく気が付いた。


彼女の行動。


それは全て、計算の内の出来事で。



僕はその笑顔に、すっかり騙されていたのだった。




< 14 / 50 >

この作品をシェア

pagetop