『理子、好きだよ。不器用な所も、全部愛してる』



慎はいつも、優しく愛を伝えてくれた。

そんな真っ直ぐな言葉が恥ずかしくて、くすぐったくて、可愛げのない態度ばかりしてしまった。

そんな私だから、彼も他の人を抱いたのだろう。



私がもっと、素直に可愛くいられたら、結果は違っていたのかな。

私だけを、見てくれていたのかな。



全てが、今更のことだけれど。





「……ん……」



ガタン、ゴトン……と鳴る音と心地よい振動に目を覚ます。窓の外に通り過ぎて行く緑色の景色たちに思い出すのは、ここが電車内であること。



もうすぐ着くかな。

ふぁ、とあくびをこぼしながら見た腕時計の時刻から、現在の位置を推測した。





旅に出ようと決めた日から2日が経った、6月1日。私の姿は、群馬県を走る電車の中にあった。

その日のうちに泊まる宿を決め、思い切って一ヶ月連泊で予約を入れた次の日には、会社に行って有給願いと休暇届けを出してきた。



上司は驚いていたし、先輩は『いきなり一ヶ月も休むなんて非常識ね。まぁ吉村さんがいなくても仕事は回るから大丈夫だけど』と嫌味を言っていたけれど、気にしない。どうせこの先一ヶ月は顔を合わせないし、事実だし。

それから荷物をまとめて、今朝東京を出た。



慎からは昨日からじゃんじゃん連絡が来ていたけれど、全て無視。

『ごめん、別れたくない』、そんな内容のメールも、もう見飽きたし。

まぁ、東京を出る時に携帯の電源も切ったから、電話もメールももう目にすることはないけれど。



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無愛想  不器用  年上 

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