愛結の隣に悠ちゃん

昔話 ―昔の愛結と悠人―



「ふぇっ……ふぇえっ……」

小学一年生の時、愛結は毎日泣いて学校から帰ってきていた。
両親は仕事に出ていて愛結の頼れる存在は一人しかいなかった。

「やーい、泣き虫泣き虫ー」

愛結に意地悪をするのはいつもクラスの男の子。
帰り道ですら愛結はその男の子に意地悪をされていた。

「あゆをいじめんなあ!!」

悠人に助けられたのは今まで数えきれないくらいあった。
泣きじゃくる愛結の前に悠人が立ちはだかり、悠人はいじめっ子をきつく睨み付ける。

「げっ……」

悠人は強いと噂のある存在だった。
それは今も昔もなにも変わらない。

いじめっ子は顔を歪め、走って逃げた。

「ゆうちゃんっ……ゆうちゃんっ……」

いじめっ子がいなくなれば愛結は悠人の服を掴む。
悠人はそれを嫌がるような顔をするが、決して愛結を振り払うことはなかった。

「あゆ、おれはいつまでもたすけられないんだぞっ、つよくなれよ!!」

悠人は少しきつめに愛結に言う。
その態度に一瞬怯んでしまうが、愛結は何だかんだで助けてくれる、優しい悠人を知っているので、反省することなどなかった。

いつも愛結の前を歩き、いつも悠人の服を掴んで帰る二人の姿は微笑ましいものであった。

いつも助けてくれる人がいる、そばにずっといてくれる、その存在にずっと甘えていたのだ。

その存在に危機が近付いていることも、悠人も愛結も誰も分からなかった。

「ゆうちゃんっ、あゆとこれからも一緒っ」

「それはむりかもっていってるだろー」

荒い口調で悠人が言う。
しかし、悠人は愛結の存在を嫌がったりすることはなかった。
これは、その先も変わらなかっただろう。


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