上手く乗り切ったつもりだったのに、自分の知らないところで傷はいっそう深くなっていた。



休日明けの月曜日、客先との打合せから帰ってきた木戸先輩は真っ先に私の席へとやってきた。いつになく険しい顔をして、明らかに機嫌が悪そう。



「あの後、何があったの?」



頭を下げた低い姿勢で声を潜める。何事かと思ったけど、すぐに懇親会の後のことだとわかった。木戸先輩たちと別れた後、福沢さんと私がちゃんと帰ることができたのか気にしてくれているんだと。



でも、どうして木戸先輩が怖い顔をしているのかがわからない。



「何にもないですよ、福沢さんと合流して駅に行く途中、福沢さんが鍵を失くしたから店に戻ったら終電を逃して、タクシーを拾ろおうとしてたら私は知り合いに会ったので、福沢さんとは別れました」



ありのままを答えたのに木戸先輩の表情は晴れない。何が気に入らないのかわからないけれど、眉間にしわを寄せてる。



「福沢さんに何かあったんですか?」

「大隈さん、彼氏いないんじゃなかったの?」



私の問いかけを無視して、木戸先輩がきっと睨んだ。

「いいえ、彼はただの知り合いです。たまたま通りがかって……」

「嘘だろ? それが噂の彼?」



畳み掛けるような強い口調で私の言葉を遮る。声のトーンが上がって、周りの人がこちらを振り向いた。





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