久しぶりに二人揃ってシェリーのドアをくぐると、カウンターの中のマスターが、意外そうに片眉を上げた。

「どういうことになってんのか、ついていけないんだけど」

また珍しく、驚いた顔が見られた。ちょっとだけ得した気分。

「残念ながら、ヨリが戻ったとかじゃないですよ」

私は苦笑を返して、左から二番目に座る。祥裄は一番左だ。

左利きの祥裄と食事をする時の、指定ポジション。


「お腹減ってるんで、お酒じゃなくてなんか食べさせてください。オムライス希望」

「じゃあ俺はパスタで。あとなんか適当に出してください」


基本はバーなのであまり知られていないけれど、マスターの作る料理は美味しい。常連になればこちらの希望のものを作ってくれる。昔、どこかのレストランで働いていた経験があるらしい。

了解、と頷いて、私にはすぐに水を出してくれた。
空腹でアルコールを飲むと私がすぐに潰れることをマスターは知っていて、お腹減った、と申告した時は最初にお酒を出すことはしない。祥裄はビールを注文する。


一緒に差し出された二つのおしぼりを受け取って、一つを祥裄に渡す。


「なあ、お前、昨日荷物全部置いてっただろ。帰れなかったんじゃないの?」

「このカッコ見たらわかるでしょ。友達の家に泊めてもらいました」

「友達って男?」

「女。男友達なんていない」


なぜだか咄嗟に嘘をついてしまった。

大輔くんは私にとってなんていうカテゴリーになるのだろう、とふと思う。
友達? 担当美容師? 仕事仲間? 
どれもしっくり来なかった。ただの知り合い、が一番正しい気がする。

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