そのまま正月が過ぎ、俺は行きつけの渋谷のショットバーでバーテンを始めた。
最初からこっちをやっとけばよかった。酒は飲めるし、金ももらえて、女ももらえる。なんて素晴らしい仕事なんだろう。もう会計士なんかやめて、水商売しようかな。親父に頼めば、店の一つや二つ、出してもらえるだろう。
ああ、いかん……俺はまた、こんな甘い考えを……

 春が来て、三回生になり、本格的にゼミが始まった。それなりに勉強しないとさすがに国家試験は厳しい。昼は真面目に学校に行き、夜は渋谷のバーでバイトして、夜中は日替わりデート。家には着替えに帰るくらいで、面倒だし、ホテル代もバカにならない。
 そうこうしている間に、俺はついに、親父の秘書の松永さんに呼び出された。松永さんは、親父がまだペーペー議員の頃からの秘書で、俺達兄弟の親父代わりと言っても過言でなく、親父だけじゃなく、佐倉家は松永さんに頼りっきりで、俺も松永さんだけは、信頼している。

「最近、家にちゃんと帰ってないみたいだねえ」
どうやら、俺の素行は、あちこちで目撃され、親父の耳に入り、激怒しているらしい。松永さんは、面倒そうに、俺の前に座ってため息をついた。
「バイトが遅くなるんで、終電に間に合わないことが多いんです」
「塾、辞めたらしいね」
「あんまり、合わなくて……」
「先生の事務所でアルバイトするかい?」
松永さんは、言わされてる感満載で、俺みたいな厄介者を押し付けられて、本当に迷惑そうな顔をしていた。
「あの、俺……一人暮らししたいんですけど……もう二十一だし、勉強も頑張ります。ちゃんと、しますから」
な、わけない。もちろん理由はホテル代わり。まぁ、バレバレだったけど、親父も松永さんも、ホテル街をウロウロされるよりは、とすんなり許可してくれた。というより、三行半を押され、俺は実家を出た。

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