《おもしろい!》

「どわっ!?」


突如出現したヒスイに驚いたあたしは、万歳するような格好でお湯の中に倒れた。


《なんじゃ、ナゴム。そなたは湯の中で泳ぐのが好きじゃのう》

「ち、違う!あんたがいきなり出てきたからびっくりしただけだし」


その場にいなかったはずの人のどアップが来たら、誰だって驚きますよ!


あれだけ緊張感が高まってた湯殿の空気が、何だか気が抜けたようにぽわんとしてる。ヒスイが出てきたせいだろうな。


「あ~あ……もう、髪の毛までぐしゃぐしゃだ」


お湯の中で尻もちをついたままのあたしは、立ち上がろうとしたけど。目の前にスッと手が差し出された。


「どうぞ、お手を」


セリスが微笑んで、あたしに掴まれと促す。


「ええっ……と」


セリスを見上げる姿勢のまま、あたしは逡巡する。もしもこれが彼と知り合った当初なら、何の躊躇いもなくこの手を取っていただろう。


けれど、今は。


彼が偽りをあたしに語り、嘘をついていた――その事実が重くのし掛かる。


きっとセリスは自分の気持ちに嘘はついてない。けれど、出自という大切な部分であたしを騙した。


それが、何よりも悲しかった。


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