さよならさえ、嘘だというのなら

カンスケさんは俺達とおじさんを無視して山奥へ一度真っ直ぐ進み、大きな荷台を引っ張りながら俺達の前に戻り、須田海斗の身体を乱暴に持ち上げ荷台に叩きつけた。須田海斗の喉の奥から空気が漏れたような声が聞こえたけど、カンスケさんは慣れた手つきで須田海斗の首をねじり、人形のような身体にさせた。

ありえない体制を取りながら
須田海斗は目を見開き
苦しそうな顔をしたまま
荷台に乗せられ
カンスケさんに引かれて山に飲み込まれて消えてゆく。

俺は震える凪子の肩をきつく抱く。
強くきつく抱かないと
どちらかが倒れそうだから。

「カンスケさんだけが、この山の全てを知っている」

きっと智和おじさんは
カンスケさんの胸にいつもある
古いガラケーに電話して
カンスケさんを呼んだのだろう。

「何となく……お前も気付いてるだろ」

智和おじさんは立ち上がってる俺と凪子に座るように指示し、半月前に宣言した禁煙のオキテを破りポケットから煙草を出して火を点ける。

暗がりで灯されるライターの炎を受けたおじさんは、とても魅力的な顔をしていてイケメン度を増していた。

おじさんの言葉に

俺は小さくうなずいた。

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