空と君との間には

3話 ゴーストライター再び

「結城、万萬の連載始まったな」


「ええ」


「沢田先生は1話を読まれて、深刻な顔をされていた」


「そう……ですか」


結城はパソコンのキーボードを叩いていた手を休め、相田を見る。


「結城、彼女が……『空と君との間には』を読んで、『結城さんは元気?』って何度も訊ねるんだ」


「!?……」


澄まし顔で相田に相槌を打っていた結城が、顔色を変える。


「手の傷は大丈夫か? とか、浅田とはまだいがみ合っているのか?とか、体は大丈夫か? とか……」

結城は黙したままパソコン画面に、目を移す。


「『空と君との間には』の『吉行斎』は、お前ではないのかって」


「何もかも、もう大丈夫だと……『吉行斎』は俺ではない……と伝えてください」


「結城?」


「あのことは、俺の問題で……俺が原因で、彼女を巻き込んで傷つけたんだ……彼女には1日も早く忘れてほしいし、彼女は忘れるべきだ」
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