オレンジロード~商店街恋愛録~
レイジは、自分にとって『友達』がどれほど大きな存在であるかわかっている。

わかっているからこそ、ここでこうやって再確認できて、それだけで満足なのだ。



「ほら、行くぞ。もう浩太の店には電話してっから」

「ちょっ、服伸びる」

「うるっせぇ。ちゃっちゃと歩け」

「待って! 服! やばいって! 服が!」


ぎゃあぎゃあ騒ぐレイジの声と、ゲラゲラと笑うハルの声が、シャッターの閉まった商店街に響く。




ダンスから逃げた自分に後悔がないと言えば嘘になる。

できるものならやり直したいという気持ちがあるのも事実だ。


しかし、もう、今の自分は否定しない。


そのおかげで知ったことがある。

見つけたものもある。



自分を大切だと言ってくれる人に恥じない生き方をしているなら、それがどんな人生だろうといいのではないか。



今はそれに気付けただけでいい。

ハルは不思議な満足感の中、レイジの服を引っ張った。












END

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