2人だけの秘密。
おまけ激短編集
【おまけ①】



平日の、昼下がり。

修史さんと二人でお菓子のポッキーを食べていたら、たまたま。

本当にたまたま、テレビからある映像が流れてきた。


『ポッキーゲーム、しよ?』

『え、それってどういう…!?』


突然の、甘い偶然。

しかも、今修史さんと二人きりだし。

その言葉に反応しないわけがなくて。

ただのポッキーのCM。

見慣れた女優さんが、見たことない俳優さんをそう言って誘惑してる。

お互いに顔が近づくけれど、キスまでいかない。

甘い雰囲気でポッキーを売っちゃうのは、ちょっとずるいとも思う。

あたしがそのCMの直後にチラリと修史さんを見ると、その瞬間にバチっと目が合った。


「!」


考えていることは、おんなじなのか。

だけど、修史さんは、


「それもう一本ちょうだい」


なんて、ポッキーのことしか、頭にない。

そりゃあ、もう結婚してるし修史さんはあたしの旦那様だから、未だに憧れるのも可笑しな話だけれど。

わかってる、けれど。


「…ねぇ」

「ん?」


あたしは、冗談ぽく言ってみた。


「ポッキーゲーム、やってみない?」

「え、」


だけど、一方そんなことを言われた修史さんは、目をぱちくりとさせて、あたしを見る。

その表情は、まるで「何言ってんの?」とでも言っているみたい。

でもあたしはめげずに言う。


「ね、いいじゃん。ちょうど今ポッキー食べてるんだし」


そう言って、またポッキーを手に取って、修史さんに笑顔を向ける。

だけど修史さんは、少し呆れたようにあたしに言った。


「え、何で。やらないよ」

「ええー」

「それは、夫婦でやってもドキドキ感に欠けるだろ。チューしたいなら普通にすりゃあいいじゃん」

「…そうだけど」


修史さんはそう言うと、目の前のリモコンを手に取って、テレビのチャンネルを変えてしまう。
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