社長室のドアを開けると高級な革のソフ

ァに腰掛ける2人の男性。


私が秘書として仕える60代半ばの社長

は、斬新なデザインでこの会社《飛鳥建

設》を日本を代表する建設会社にまでし

た人である。


その人の真向かいに座る男性は、一昨日

、ニューヨークから戻って来たばかりの

社長の息子で今年30歳になる飛島 零



震える体を抑え、テーブルにコーヒーを

運ぶ。


近づくにつれ、彼から香るタバコの香り

があの日を思い出してしまう。


なぜ、今、彼はここにいるのだろう⁈


もう、会うこともないと思っていたのに






彼に最初に会ったのは去年の秋、従姉妹

の結婚式に出席した時、『結婚はまだ⁇

』『そろそろいい歳でしょう⁈」などな

ど親戚中に嫌味を言われても我慢して愛

想笑いを浮かべていた。


疲れはてた私は、逃げるようホテルの地

下にあるバーに逃げ込んだ。


カウンターでうさを晴らす為に飲んでい

ると、2席挟んだ隣で飲む男と目が合う



男はウイスキーをロックで飲み、右手

にタバコを持ち甘い匂いがする煙を吐い

ていた。


座っていても背が高いとわかる男は、長

い足を投げ出しカウンターに寄りかかり

こちらを見ている。


キリッとした切れ長の二重、眼力のある

目をした甘いマスクの男に微笑まれると

引き込まれるように声をかけていた。


(一緒に飲まない⁈)


その時の私はどうかしてたのかもしれな

い。


警戒もせずに男とお酒を飲み、1人、パ

ーティードレスを着て飲んでいる理由を

聞かれ、恥ずかしげもなく身の上話を話

してしまった。


『うちの親戚の女性達は当たり前のよう

に誰もが早婚なの。春に28歳になる私

は行き遅れ……業を煮やした母が誕生日

までにお見合いをして結婚をしなさいっ

て条件を突きつけきたのよね…親戚にも

嫌味を言われて逃げてきたの…ふふふッ

20歳の従姉妹の結婚式に出席しても、

やっぱり、男性陣は若い女の子の方がい

いのよ。私なんて相手にもされなかった

わ』


就職した時はもてはやされても、今は結

婚できない女と後ろ指さされる。哀れに

思った親戚が、お見合い話を持ちかけて

くる。今まで持ってきた見合い相手は、

バツがつく男性か生理的に無理だと思う

男性ばかり。



『…俺は、若い女の子は苦手だけど…』

ただ、黙って聞いていた男が呟いた。

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