Like Cats and Dogs
Like Cats and Dogs(犬猿の仲)


「でさ~、俺その夜ナンパした女の子と飲みに行ったらさ~

鉢わせちゃったわけよ。元カノと。キマヅイったらない」


あははは!


すぐ隣から豪快な笑い声が聞こえてきて、私は呆れながらも赤ワインを一口。


よくもまぁさっきから喋る喋る、よく喋る。男のお喋りは見苦しいわよ。


さっすが猿山のボス猿。


「え~やだぁ。猿渡室長、面白すぎ!」


何が面白いんだ。


こいつの名前は本当はサルワタリじゃなくサルスベリなんじゃないの?


馬鹿な話に付き合ってるのは、今春入社したばかりの新入社員ちゃん。猿山(猿渡グループ室)の一人だ。


いかにもイマドキ風の可愛い子ちゃんで、ふわふわ巻き髪と、シフォンのブラウスにスカートと言う組み合わせの、気合いを入れた格好で私の反対側……猿渡の隣をこの飲み会が始まったときから陣取っている。


大して面白くない話もうるうるおめめで頷いて、ピンク色のグロスが乗った唇を物欲しそうにアヒルのように尖らせている。


そんなのを小一時間も見せつけられてみ?


いい加減嫌になるっつうの。


今日は私が働く出版社の飲み会。広報部の第二グループ室を任せられるようになってはや二年。


同じ時期に第一グループ室長に任じられたのが、猿渡と言うのがまた腹立たしいことだけど。


苛々と赤ワインを喉に流し込んでいると、違うグループ室長が


「飲んでる~?犬井ちゃん♬」と私の真向いでにこにこ話しかけてきた。


「あ…はい」


年上でも先輩でもある室長に答えるために顔を上げたときだった。


トン


私の肘に猿渡の肘がぶつかった。




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