俺様御曹司の悩殺プロポーズ
雲の上の住人
 


 ◇◇◇


2月上旬。

札幌は、まだまだ雪の中。


平日の朝、出勤するべく地下歩行空間を歩いていると、

前から来た素朴な身なりの中年女性に、突然むんずと、腕を掴まれた。



「ちょっと、あんた!
桜テレビの春っぺでないかい?

いや〜嬉しい!
これからテレビ局?

あたしゃ、春っぺの大ファンだから、頑張ってね!」




腕がもげそうな勢いで、ブンブンと握手してくれるおばさんに対し、

私の笑顔はぎこちない。



以前の私なら、こんな風に声をかけてもらえたら嬉しくて、一日中ニマニマするほど浮かれていたのに、

今は素直に喜べなくなっていた。



その理由は――。



ファンと言ってくれたおばさんは、握手の後、私のお尻をペシンと叩いてこう付け加えた。



「今日も毛糸のパンツ履いてっかい?

女は赤ん坊産まなきゃなんないから、下半身冷やしちゃ駄目さ。

笑われたってイイ。
ちゃあんと、あったかくしてなよ」



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