あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
いやいやいや。
このムードで、流れでそれ言う?
いや、あたしが勘違いしてたのか?
そして、今王子が言った言葉……。
『ウェズリアを守るために戦ってくれ』?
「あたしが、戦うの?」
声が裏返ってしまった。
王子はキョトンとして、
「それ以外になにがある」
なんて言うし。
「王子が戦うんじゃないんですか?」
いくらあたしが魔力が強い魔女だって言ったって、魔力の使い方とか戦い方とかぜんぜんわからないし。
それに、王子だって魔力持ってるんでしょ?
なんか、あたしに丸投げされた気がするのは、気のせい?
「まおは魔女だろう?」
「そう、ですけど……」
普通!
ラブファンタジーの小説だったら、王子が主人公を
「俺が命を懸けて守る!!」
とか、胸キュンセリフを言う、はずじゃ……。
というか、勝手に知らない世界に呼びつけといて何も知らない女の子に向かって戦えだって〜⁉︎
今、目の前にいる王子は……。
「俺たちを守ってくれるんだろ? 魔女様」
口角を上げただけの美しいけれど黒い笑顔を浮かべた王子様……。
その笑みは、あたしが魔法を本当に使えて、しかもこの国で一番強いとされる魔女だと一ミリも疑いもせず、信じきっているものだ。
初めて見た笑みがその黒い笑顔だなんて……。
いや、もう見た目だけだ。
理想の王子様なんて。
あたしの理想の小説のような恋物語など、ここの異世界はかけ離れている。
これからのあたし、どうなってしまうんでしょうか。