「お疲れー」

「お疲れ様です」


「ふう、やーっと、終わったあ。女子がいる時間じゃないですよぉ」


ひっそりと静まる夜更けの更衣室の中、私の後輩である新庄紗也香は、ロッカーに寄り掛かるようにして、しみじみと言った。

それもそのはず。いまの時間女子社員はみんな帰宅してて、私たちの他には誰もいないのだから。


「お疲れさま。特に今回は、計算が合わなくてきつかったね」

「ほんっと、そうですよー」


ノロノロと着替えを始めた紗也香の口からは「まったくもう、あそこの支部長はー」って、止めどない愚痴が溢れ出す。

売上と支出、全国から集まるデータを纏める物流管理課の私と紗也香は、締めのある月末月始は最低でも1週間は残業が続く。

各営業所が提出期日を守ってくれれば割とすんなり終わるけれど、そうでないところが多いのが現実。

データが送付されるのが遅れれば私たちの処理が遅くなるのは当然のことで、仮締めの今日は既に10時をまわっていた。

私たち女子事務員の仕事は終わったけれど、男性陣はこの後の処理がまだまだ続く。

課長なんて、今日中に帰宅できればいい方で、本締め日は帰れないこともある。

毎回お泊りグッズを用意していて、本当にお疲れさまだと思う。


「だ、か、ら、彩乃先輩。お疲れーってことで、これから二人で飲みに行きませんか?受付の麻衣が、イケメンのバーテンがいる店見つけたって、教えてくれたんです。ここから近いんですよー!行きましょーよ!」


嬉々として言う紗也香からは、さっきまで見せてたお疲れモードがすっかり消え失せている。

瞳は輝いていて、心はもう、その店に飛んでいるかのよう。

切り替えが早いというか、回復力が半端ないというか。

若いっていいなと思う。

私がまだ何も言ってないのに、既に行く気満々のようで、メイク直しも力が入ってるようにみえる。

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