君のいいところ、1つしか思いつかない。

ピンクの浴衣





「晴に本命できたって聞いた?」





トイレのドアを開けようとして、聞こえた言葉に手を止める。




「あー、岸田紗月でしょ?」

「あ、聞いたそれ」



3人くらいの声。

何を言われるのか怖くて、でも良いことではないってことだけはわかって。


聞きたくないのに、足が動かなかった。






「どうせすぐ別れるでしょ」
「うん、晴が飽きるって」
「だよねー、あの子特別かわいいってわけでもないし」




やだ、言わないで、聞きたくない…。


キュッと目を閉じても、聞きたくない言葉は容赦なく耳に入ってくる。






「女慣れしてる晴があんな普通の子で満足するわけないじゃんね!」

「そーそー。積極的でもなさそうだし」





3人が出てきそうになって、やっと動いた足。

慌ててその場から逃げた。





< 244 / 296 >

この作品をシェア

pagetop