高く登りつめた夏の太陽は、その姿を西の彼方へと沈めても、一日の余熱でぐつぐつと大地を蒸し上げる。

私の頭の中では彼のことがぐるぐると回り続け、今にも沸騰してしまいそう。


樋泉さんが恋人らしき美人さんと仲睦まじげなのを目撃してしまい、落ち込んでいたのは先週の金曜日のことだった。

樋泉さんの彼女になれるだなんて望んだつもりはなかったけれど、好きになってしまったからには、本当はどこかで期待していた部分もあったのかもしれない。

始まったばかりの恋の早々の失恋にしばらくショックを受けていたものの、次に会ったときには彼の迷惑にならないよう、自分の気持ちを隠してただの営業先の書店員に徹するくらいのことはできる。

……と、思う。


「そうだよ、これは別に、アドバイスをもらった書店員として何も不自然なことじゃないし……」


今日はあれから4日後の火曜日。

樋泉さんが海外ロマンス小説をミエル文庫の隣の棚に移動させるようアドバイスをくれてから、一週間が経った。

驚くことに、この一週間でそれまでと比べものにならないほど、翻訳モノの棚の動きがよくなったのだ。

「このお店、こんな本も置いてたのね」って、今まであまり注目されなかったジャンルに興味を持って手に取ってくれたお客様がたくさんいる。

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