蟲狩り少女
そんな起用なことはやった事がなくて、あたしは首をかしげる。


そうしているとキッチンにいたお母さんが顔を出した。


「帰ってきてたのなら、『ただいま』くらい言いなさいよ。リビングから声が聞こえてくるから、誰がいるのかと思ったわよ」


「あ、ごめんなさい。ただいまお母さん」


クリッと振り向いてニコッと笑う。


お母さんはエプロンを付けていて、甘い香りがする。


「おかえり、里音。それ、全部夏休みの宿題?」


あたしの鞄の中を覗き込み、お母さんは目を丸くして聞いてくる。


「そうなの! すごく多いでしょ」


「大変ね。でも夏休みは明日からなんだから、今日はゆっくり休んだら?」
< 93 / 289 >

この作品をシェア

pagetop