M O R E
宮野 雪帆

好きでした。

あなたが好きでした。

でも、これはダメな恋でした。

してはいけない恋でした。

決して報われない恋でした。

それでも、好きでした。

あなたに恋をしました。

時には胸が締め付けられました。

辛くて涙が伝った時もありました。

だけど、あなたの笑顔があったから。

だからずっと好きでいました。

好きでいられることができました。

交わす言葉の一つ一つが宝物でした。

忘れたくない思い出でした。

なのに私は無理みたいです。

これ以上は無理みたいなんです。

記憶の欠片が端々からこぼれ落ちていくのです。

砂を掴めないのと同じように、サラサラと。

あなたとの記憶がなくなっていくんです。

忘れたくなんかないのに消えていくんです。

どんどんこぼれ落ちていくんです。

そして、真っ白になるんです。

なんの記憶も残らないんです。

嬉しいことも、悲しいことも、楽しかったことも、切なかったことでさえも…。

全部、全部、消えていくんです。

きっと、そのことが何よりも苦しいんです。

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