「池山さん、始めるよ」
ドアの向こうから、山科の声が飛んでくる。


「はいっ」
園子は資料を一式もって、会議室へと急いだ。何度も準備不足がないかどうか考えていたら、もらったチョコレートはあっという間に半分以上なくなった。園子の脳が、猛スピードで糖分を消費しているようだ。


営業一グループから三グループまでのリーダーが、四角い会議机を取り囲んだ。一番奥の席に、山科がコンピュータと園子の作成した資料を持って座っている。リーダー達は、心なしか緊張している。どんな部長なのか、探っているような雰囲気だ。


会議室の扉を閉めると、山科が「ここ五年間の資料を読みました」と口を開く。
「新規ルートの開拓が全くできてない。そう思いましたね」
鋭く、そう切り込んだ。


「TSUBAKI化粧品から、どのくらいの売り上げアップを指示されてるか、お分かりになりますか?」


第二グループリーダーの朋生が「二倍ぐらいでしょうか?」と訊ねる。


「五倍です」
山科はそう言って、背もたれに身体を預けた。反応を確かめるように、おのおのの顔を見つめる。


「すぐには無理です。でも猶予は一年もらいました。達成できます。必ず」
「……そう……ですか?」
朋生は半ば引きつりながら、山科の顔を伺った。


「闇雲にルートを開拓しようとしても駄目です。大胆な手法の変化が必要だと思いませんか?」
「すみません、横やりで申し訳ないんですが」
第一グループのリーダー、小杉が手をあげた。


「せっかく大手のブランドが上についたのですから、その販売ルートに乗せてもらうことはできないんでしょうか」
山科はその発言を聞くと、両肘をデスクについて、小杉の目をじっと見つめる。
それから「口惜しくありません?」と訊ねた。

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