腹黒教師の甘い策略
「もっとペース落とせ。
すぐつぶれるぞ。」
「いいの。こんなんじゃつぶれないわよ。」
谷崎への怒りを発散させようと、
爽やか店員さんが持ってきてくれたトマトチューハイを煽る。
うん、美味しい!
イライラしたときのトマトチューハイってどうしてこんなに美味しいんだろ。
まあ、いつでも美味しいけど。
ぐびぐびと飲み続ける私を見つめ、
またふっと微笑んだ谷崎。
あ…っ、また、さっきの優しい顔。
「な、何よ。」
「…それ、まだ好きなんだな。」
「え…?」
優しく目を細め、私を見つめながら、
息をつくようにそう囁いた谷崎。
その言葉の意図がわからず、私はただ呆然とするだけ。
“まだ好きなんだな”?
なにそれ…まるで、私が昔からトマトチューハイが好きなの知ってるみたいな…
「そ、それどういう…」
「…いや、べつに。
なんでもないよ。」
私の問いかけに、はっと驚いた顔をして、
谷崎はなんでもない、と誤魔化した。
もっと追及したかったけど、
谷崎の真剣な顔と、なにも聞くなという、
雰囲気に、私は口を開けなかった。