「お前、家どこだ」

「……市役所の裏の公園のそばですけど」

「じゃあ送る。そこのロータリーで待ってろ」

「え、あの……」


編集長はそれだけ言うと、私を取り残してこの場から離れてしまう。

行っちゃった……歩いて帰れる距離だから別にいいのに。
どこかに車を停めてあるのかな?
でも編集長って、いつも出勤は車じゃなかったような――――。





私の記憶は正しかった。

言われた通りにロータリーで待っていた私の目の前でエンジンを唸らせて止まったのは、光沢のある黒いボディに太くて赤いラインが走る、大きなバイク。

長い脚を折り曲げてそれに跨る編集長は、いつもの二割増しでカッコよく見える。けど……


「ほら、これ被れ」


ぽん、と放られたヘルメットを反射的にキャッチするも、すんなりそれを被ることができない。

なぜなら私は大の苦手なのだ。遊園地のジェットコースターとか、いわゆる絶叫系と呼ばれる、スピードが出る乗り物は。


「あの……私、まだ死にたくないです」

「……失礼だなお前。十八の頃から乗ってるから運転には慣れてるし、後ろに人乗せる場合はいつもより気をつけるから心配するなよ」

「……制限速度ぴったりで走ってくれます?」

「おー、走る走る」


本当かな……

疑いの眼差しを向けると、私の手から無理矢理ヘルメットを奪った彼が、それをボスンと私の頭にかぶせてしまった。


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