月だけが見ていた
面会の許可がおりてすぐに葉子の病室へ向かった。

はやる気持ちを抑え、病室の扉を開けると
窓から差し込む柔らかな朝日に照らされて、葉子はベッドに横たわっている。


髪の毛は茶色く陽に透け、肌はいつにも増して青白い。

その儚さに 一瞬、息をのんだ。


「葉子」


上から顔を覗き込んで声をかけた。
酸素マスクは外されているが、頭の包帯は巻かれたままだ。

まだ完全には意識がハッキリしないのだろう。
葉子は頼りなく視線をさまよわせ、
やがて 俺を見つけた。



「ふたみ、しゅにん…」
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