〈BL〉一時の幸福(しあわせ)〈短編〉
一時の幸福(しあわせ)
雲居陽加・二十七歳。

独身・ニート。

おまけにゲイ。

そんな俺に
見合い話が舞い込んで来た。


当然、この話を
持って来たのは母親だ。

何処で知り合ったのか
知らないがどう見ても
良家のお嬢様といった
雰囲気を醸し出している
写真の女性。

俺が“普通”の恋愛が
できるように戻れたら
喜んだだろう。

しかし、そんなものは
夢でしかない……


俺がゲイだと自覚したのは
高校二年の頃だった。

【美坂顕正】

それが俺の好きな人の名前だ。

高校二年の六月。

最初は勘違いかと思った。

その当時、“彼女”もいたから
よけいに悩んだ。

だけど、何をしてても
顕正のことばかりが
頭に浮かんでくる……

認めるしかなかった……

顕正に想いを伝えることなく
高校を卒業し、二十七歳に
なった今でも言えないままでいる。

そして、母さんが
俺に見合い話を持って来たように
この年になると“結婚話”が
あっちこっちから聞こえてくる……

俺たちみたいな人種には
一生縁のない話だ。

興奮しながら話す
母さんの言葉を
右から左へと聞き流す。

見合い相手が例え
俺を気に入ったとしても
無理な話だ……

しかし、そんな
思いとは裏腹に
見合いの日はやってきた。

彼女は写真より
綺麗だったが、
頭には顕正の顔が浮かんだ。

会いたい……

顕正に……

アイツは今頃、
化学準備室で
昼御飯を食ってるんだろうなぁ。
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