「チキンのソテーにしようかと思うんだ。やっぱ赤ワインが合うよな」

 透也は高級食材を扱うスーパーでカゴに鶏もも肉のパックを入れた。

「私はワインは遠慮しておく。運転しなきゃいけないし」

 透也の横を歩く凜香がそっけなく言った。

「まさか帰るつもり?」
「当たり前でしょ。〝本物のデートじゃなくて結構ですよ〟って言ってたのは透也くんの方じゃない」
「透也でいいって言ったのに」
「無理」

 凜香の口調は相変わらず冷たく、透也はどうにか落胆を押し隠した。

(酔わせるのは諦めるとするか。でも、さすがの凜香でも男の手料理にはぐっとくるんじゃないか?)

 そんなことを思いながら、もう一押ししてみるか、と右手を凜香の腰に回した。

「何す……」
「デートだから」

 凜香がふいっと顔を背ける。

(特定の相手はいないって言ってたし、屋上であんなコトをしてるくらいだから……俺にも簡単に落ちると思ったのになぁ……。屋上の男はいったいどうやって凜香を口説いてるんだろう)

 内心首をひねりながら、透也は会計を済ませて店を出た。凜香の車で彼のマンションまで送ってもらう。

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