誰かが僕に
出会った鬼は吉か凶か
僕らを焼き尽くさんとばかりに照りつける太陽の下で僕は自転車を漕いでいた。
まだ車の免許も持っていない僕の移動手段は自転車と小学生の頃から変わってはいない。
蝉も七日間と短い地上の人生を無駄にはしないと鳴き続けている。
そんな蝉も頑張る中僕は無職だった。
所謂ニートだった。

こんな僕にも仕事の話が舞い降りてきた。
早蕨早苗さんという女性からの刑事の仕事だ。
なぜこんな取り柄のない僕を刑事に誘うのかというと僕は五年前大手柄をおさめていた。
5年前の夏、丁度15歳だった。
家に帰ると両親が惨殺されていた。
強盗に入った強盗犯が両親に見つかりパニックで殺したのだ。その犯人を僕は突き止め捕まえてしまったのだ。
まるで某探偵アニメの主人公だ。
しかし、僕は刑事の仕事を断った。
刑事の仕事よりもしたいことがあった。

それは美少女フィギュアを買うことだ。
やっと手に入ったのだ。ずっとずっと見つからなかったレアな限定品が。
少し値がはったが僕は即購入した。
今月朝ごはんを抜けばなんとか今月はお金に困ることはなく生きて行ける。

あともうすぐで店につくところで、頭を押さえうずくまる少年
自転車を止め思わず声をかけた。
「おい、お前大丈夫か…?」すると
「頭が凄く痛いんだ…また何かが聞こえる…俺は悪くないって…」
歯をギリギリと噛み締め頭をおさえている
顔を色が悪く汗を沢山かいていた。
こんな炎天下だ。きっと熱中症に違いないと近くの公園まで運んだ。
たまたま持ち合わせていたスポーツドリンクを渡し少年に飲ませる。
少年は躊躇いなくごくごくと飲みぷはぁと息をついた。
よっぽどのどが渇いていたのだろう。
「ありがとう、おじさん。」とにこっと笑う
「あのな……?僕は君のお母さんやお父さんより若いんだぞ!」というと少年はくすくすと笑った。

ただの熱中症だろう。
頭痛により過去に聞いた言葉でも思い出したのだろうと考え俺はもともとの目的を果たすべく少年に
「じゃあな、早く家に帰ってやすめよ!」と声をかけ自転車を漕ぐのだった。
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