強がった弱虫の話
強がった弱虫達は出会った

強がった弱虫が2匹






俺の名前は吉田 咲(よしだ さく)。

俺は小さい時からイジメにあっていた。

幼稚園でも小学校でも中学校でも同じだった。


俺が幼稚園に入ったのは年長からだった。
だからターゲットになりやすかったのかもしれない。

まあ、イジメといっても幼稚園生が考えるイジメなんてのは軽いもんで、
粘土で作った作品を横から壊して来たり、仲間はずれにするとか
そんなもんだった。

でも当時はよく先生にばれないように一人で泣いてたりもした、

小学校では最初は普通だったんだ。

けど、幼稚園の時イジメてた奴らがまた俺へのイジメを再開した。
だから自然とまわりにいた友達は消えていった。

そのまま中学へあがれば、エスカレートしたイジメの延長戦のような状態だった。
そいつらは卑怯な奴らで、イジメといっていいのかどうかのギリギリな陰湿な
イジメばっかりやってた。

読書の時間に本を読んでいれば、その本のタイトルを大声で読み上げて
クスクス笑っていた。なにが面白いのか。

何か失敗すればその度に爆笑される始末。

掃除の班が一緒になっただけで泣かれたりもした。

まあそんな小さい事やってるくらいなら
どうでも良いって思ってた。


だけど、俺に直接何かやってくるわけでもないので
先生や親に訴えることもできなかった。

せいぜい親に愚痴ることくらいしかしなかった。

親はそこまでひどいイジメでもないので放っとけ、と言うだけ。
先生はあいつらに注意して終わり。

まあ期待してなかったけど。


だけど、中学もあと一年っていうところでイジメは
ものすごくエスカレートしてしまった。

俺が今までずっと黙ってやられっぱなしだったから調子にのったのか。
やられてもやられても顔にださなかったからむかついたのか。
受験シーズンでイラついていたのか。
俺があと一年くらいなら我慢すると思っていたのか。

馬鹿な奴らだと思った。



やり返す価値もないくらいの小さなことしかやってこなかったから
黙ってやられてたっていうのに。



実は俺は小さい時に空手を少しかじってた。
空手をやめてからも、時々日頃のうっぷんをはらすためにサンドバッグを相手に
一人部屋で練習していたんだ。

だけど、母親にこういわれたことがあった。


「空手を習ったことがある人は一般人とは力の差ができちゃうから、
よほどのことがない限りは、その力を一般人に使っちゃダメだからね?」


ある日から奴らは暴力を使うようになってきた。

テストの答案がかえってきた後に先生が余計なことを話した。


「クラスで一番点数が高かったのは吉田君でした。」



休み時間にテストの答案を急に奪ってきたから反射的に抵抗してしまった。

「んだよ。」

といって俺の顔を手ではたいてきた。



それでも俺は何も言わずにテストの答案を握ったまま離さなかった。
その時からだった。

暴力が始まった。

だけど俺は殴り返すことはなくても防御はしていた。



右から来たパンチを右手で掴み
左から来たパンチを左手で掴み
蹴りがきたら膝でガード。


そんなこんなで暴力は平気だった。




そのまま時は過ぎていき、
卒業式を迎えた。


卒業式の後、事件は起こった。


奴らが高校生の知り合いかなんかの不良を10人ほどつれて
俺のとこへやってきた。

されるがままに土手へ連れていかれた。


ぼこられるらしい。なんてのんきなことを考えてた。



不良のなかのリーダーみたいな奴がいた。
茶髪で顔の整った奴だったが、頭の中身は空っぽそうなやつだった。

そいつが近づいてきて俺の前髪をつかんで俺と目を合わせてきた。

俺は無機質な目でボーっとそいつの目を見ていた。


「吉田クン、お前はこれからどうなると思う?」

「・・・。」

「ヘタしたら死んじゃうかもな。」

「・・・。」

「・・無反応ですか?ビビりすぎてウンともスンともいえねぇか?」

不良達が気味の悪い笑い声をあげた。

「・・・。」


「・・・人形かよ。」


そういうと、無反応な俺にあきたのか、
髪をつかんだまま俺の顔を殴った。



俺はこの時を待っていた。

殴ってきたなら、殴り返せるだろう?

俺はこらえきれずに鼻血をだしながら笑顔になっていた。



「・・・なんだこいつ、気持ちわりぃな・・」


そいつがまた殴りかかってきた。
スローモーションみたいにこっちへ飛んでくる拳を眺めていた。



そこから先はよく覚えていない。

気が付くと俺以外は全員倒れていた。
気絶していた。

俺も俺で無傷ではなかった。

背後からやられたのか、背中にも傷が沢山あった。


いつから降っていたのか、雨が傷口にあたってしみたのをよく覚えている。










そして、俺は遠くの高校へ行くことになっているのだが・・・






どうせここでも同じなのだろう、という想いと、
微かに期待があった。

だけど、期待しない方が楽だろう。


やつらがいない所でスタートすることに様々な気持ちが
混ざり合っている。



全てを飲み込んで俺は高校へとむかった。












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