ブランドショップが建ち並ぶ通りを行きう小洒落た人々。

電話をしながら颯爽と歩くビジネスマン

腕を組んで仲良くデートをしている恋人達

おしゃべりを楽しみながら買い物を楽しむ女性たち

洗練されたこの街を歩いていると、心なしか足取りも軽やかに感じられる。


そんな浮かれた気配が漂う街並みを歩く私 沖本薫(29)の足取りはやたらと重い。

まるで自分だけ、地球のG(重力)が違うのではないかと思うくらい。

昔ドラゴンボールの修行でそんな修行があったことをふと思いだす。

「私は孫吾空か」

思わず独り言ちて、そのくだらなさに失笑する。

イケメンのドアマンが常駐する某有名ブランドのウィンドウにふと目をやる。

反射して映った自分と目が合い思わずドキリとした。

少し酔っているせいか、それとも疲れのせいか、恐らく両方の理由から目の下のクマとほうれい線がいつもよりくっきり見える気がする。


やっぱり披露宴なんて出るんじゃなかった。

そう、今日は会社の同期でもあり、元カレでもある、佐久間孝の結婚式だった。

よりにもよって新婦は私とこれまた同期の小倉裕子である。

芸能人と同じ名前だからといっても顔の造りまで同じであるはずがない。

裕子は極めて普通の、いや寧ろ地味な顔立ちだ。

しかし、背が小さく、そして憎らしいことにグラマーである。

都内の某二流私立大学を卒業後、超就職氷河期を奇跡的に乗越えて、これまた二流企業のMCカードへ入社した。

協調性がない私とは対照的に、新入社員当時から裕子は同期や先輩に人懐っこい笑顔を振りまいて、みんなから可愛がられていた。

同期の中では数少ない女子ということもあり、最初のうちは裕子も無愛想な私に対しても他の同期と同様、親しげに接してくれていた。

この作品のキーワード
偽装  腹黒  美男子  アラサー  崖っぷち 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。