ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉
01



 私はクレア。

 現在10歳。

 ウェズリア軍隊所属魔術師隊〈赤〉チームの魔術師。

 小麦色の腰まで伸びたツインテールが特徴。

 よく、10歳には見えない、落ち着いていると言われる。

 必ず4、5歳から発現すると言われている魔力。

 そのあと徐々に強くなっていき、15歳で保有量はピークを迎え、安定すると言われている。

 しかし、私は9歳にして既に学校の先生である魔術師を凌駕する魔力を有しており、保有量は留まることを知らなかった。

 両親はとくに強い魔力を持つわけでもなく、平均的だ。

 階級は、極々普通の『魔法使い』。

 出自だって、ウェズリアの端の方にある村生まれ。

 別段目立った種族でもない。

 魔力に関して特に高度な教育は施されることのないこの村だ。

 他者との違いなどわからず自分は「普通」なのだと信じており、同い年の子供と年相応の気ままな生活を過ごしていた。

 6歳の時に一度だけ、魔力を思い切り放出してしまい、森の木々をなぎ倒してしまったことがある。

 そして、9歳で村で大氾濫が起きたとき、魔術で堤防を作り上げ、その災害から村を守った。

 その際の魔力の放出量は尋常ではなく、この事態を知った、近くの街の軍人が、村を訪れてきていた。

 その村を訪れた軍人に言われたのだ。

 私の保有する魔力は「普通」ではないと。

 その言葉に私はとくになんとも感じなかったのだが、これを聞いた両親は違った。


「クレア、あなたはすばらしい魔力を持っているわ。それはきっと『魔女』にも匹敵する力」

「その力を使いこなすため、訓練しなさい」

「訓練?」

「ああ」


 お父さんは、私の肩を掴んで強く言った。

 そのお父さんの手の力が強かったことを鮮明に覚えている。


「軍隊に入りなさい」

「軍隊?」


 軍隊と言って思い浮かぶのは、この国を守るウェズリア軍隊しかない。

 屈強な魔術師たちが、集められている最強の魔術師軍隊だ。

 けれど、学校ではなくなぜ軍隊なのか。

 町にある大抵の魔術師学校は、10歳から入学が可能となる。

(学校の種類としては4歳から9歳までの魔法学校が義務教育として存在している。ここを卒業すれば無事、魔法使いの階級が与えられる。10歳から15歳までの魔術師学校はその上で、ここを卒業すると階級は魔術師になり、大方は卒業すると社会に出ていく。さらに上の高等魔術学院は、教師や研究員になる僅かの者が学んでいる。教育を受けていない者、魔力が極端に少ない者は魔使いという階級になる。ただし、この学校を卒業するのとは別に、魔力がその階級に値するとその時点で魔術師を名乗って良いものとされる。年に一度、全国民の魔力検査が行われている)

 しかし、この村で生きていく上では特に入る理由もなく、お金もないため来年から入学する資格はあれど、考えたこともなかったのだ。

 そこを飛ばして軍隊とは。

 確かに、軍隊の募集要項は魔術師であることだけだ。

 あのあと、軍人に何か言われたのだろうか。

 あとで考えると、やはり学校に入れるお金などなく、給金が出る軍隊に入って欲しいという考えが少なからずあったのだろうと思い至った。


「きっとクレアは強い魔術師になれるわ」

「そんな……」


 いくら魔力量が多いといっても……。

 とても強い聡明な魔術師ばかり集まる軍隊になど、まだ9歳である私が入ることなど本当にできるのだろうか。



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