シンメトリック
初めてのデート
うさぎ公園に、土曜日14時待ち合わせ。
午前中はバイトなんだごめんね。

昨夜のメールでのやりとり。

今日は、なつと初めて喫茶店の外で会う。
僕はいつもより早く起きて、髪を念入りにセットした。
服を何枚もクローゼットから出して、
ベットの上にたくさん並べてみた。
ドラマで明日のデートなに来ていこう~なんて、
女の子が良くやるあれだ。


あれこれ、いろいろ悩んだのに、
結局は、一番無難なシャツにジーンズ。
時間より、かなり早く着いてしまった。
公園にベンチを見つけ、そこに座る事にした。
ポケットから携帯を出して時間をみた。まだ13時過ぎ。

木陰になっているベンチ、風が心地よい。
携帯にイヤホンを繋いで、音楽をなんとなく聞く。
なんだか眠くなりそうだ…



「か…じ…くん…。梶くん?」

「あ、んぁ…あ、なつ!あ…寝てたのか!」

いつの間に寝ていたんだ!

「ごめんね。かなり待たせちゃったのかな?」

「早く着いちゃったんだよ」

「じゃあ、かなり待たせちゃったのかな。
マスターがなかなか帰って来なくて…ごめんなさい」

チラッと、携帯の時間を見た。
14時45分。かなり寝ていたらしい…

「大丈夫だよ。寝てたから…」

「あ、お腹すいてない?マスター待っている間ね、サンドイッチ作ったの。私お昼まだなんだ。一緒に食べない?」

「そう言えば…お腹すいてる」

ベンチにランチマットを広げた。
紙皿をひいて、サンドイッチを並べる。
水筒にコーヒーを入れてきたようで、
二つ並んだコップに注いだ。

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

紙コップに入ったコーヒーを受けとる。
サンドイッチは、たまごやハムなど何種類かあった。

「たまごもらうね…」

「うん。食べて」

僕は、サンドイッチを口に運んだ。

「うん、美味しい」

「良かった~」

静かに二人並んで、サンドイッチを食べた。
何にも話さなかったけど、なんだか幸せな感じ。

「今日はごめんなさい、また埋め合わせさせて!」

「本当に気にしないで。サンドイッチ食べれたし」

「明日は…喫茶店来る?」

いつもなら、帰りに喫茶店に立ち寄る日だった。

「行くよ」

「じゃあ、遅めの時間に来れるかな?
マスター帰るから、ゆっくりお話し出来るし」

「わかった」

「じゃあね、またメールするね」

なつはゆっくり喫茶店のほうに帰って行った。
僕はそれをただ眺めていた。
なつが振り返って手を振っている。

「梶くん、今日の私服カッコいいよ!」

大きな声でそう叫ぶと、足早にそこからいなくなった。

「恥ずかし…」

側を通る人にみられたが、
なんだかそんな事はどうでも良かった。
さっきまで、心地よかった風が冷たく感じられた。
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