午前0時の恋人契約
1.ヒミツ ノ ケイヤク




先の鋭い時計の針が、2の数字を指す。

空は雲ひとつない青空に、やさしく吹く風が気持ちのいい、5月の日曜日。



真っ白な壁にガラス張りの大きな窓、頭上に輝く立派なシャンデリアがなんとも豪華で美しい。

そんな高級感溢れる店内は、まるで一流ホテルの一室のようで、不慣れな私はその室内の真ん中に置かれた白い革張りのソファーに小動物のように縮こまって座るしかできない。



「市原すみれさんね。27歳、会社員、現在恋人なしの独身……」



そんな私に向かい合うように座り、書類を見ながら口を開くのは、真っ白なファンデーションに真っ赤な口紅が印象的な、50代くらいの女性。

茶色い髪を大きくカールさせ、真っ赤なジャケットに身を包んだその人は、手元に大きな宝石のついた指輪を光らせる。



あぁ、どうしよう。来てしまった。

不安と緊張だけが、ただただ頭を埋め尽くす。



そんな私の心をよそに、女性は濃い化粧の目元を細めにこりと微笑んだ。



「改めまして、レンタル彼氏の店・mi amorへようこそ」



そう、本日私

彼氏をレンタルしに、まいりました。






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