溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「はい、どうぞ」


班長が顔を上げて返事をすると、ガチャリとドアが開いた。

そこから現れたのは、つり目のスーツを着た男の人。


「あ……!」


この人、あのパーティー会場で、ライトと警官隊を引き連れてきたハスキーボイスの……!

たしか、公安の人だったような。


「失礼する。……なんだ、今日は筋肉ダルマどもは全員出払っているのか」


筋肉ダルマって……もしや、先輩SPたちのこと?なんて失礼な。


「ええ。若いのは国分邸に出払ってますよ」


慣れた様子でうなずく班長。


「そうか。まあいい、あいつらに用はない」


つり目の公安は、こちらを見た。


「どうも。今回の事件を担当している、公安の篠田です」


公安の篠田さん……。

はっ。そういえば、初めてテロリストを投げ飛ばしたあとに、みんながすごく嫌そうな顔でそんな名前を出していたような。


「嫌われ者の篠田さんだ……」

「……思ったことを口に出してしまうSPを、俺は今初めて見たぞ……」


篠田さんが咳ばらいをし、私も我に返る。


「どうせあの筋肉ダルマどもが俺の悪口を言っていたんだろう。それより一ノ瀬巡査部長」


自ら名乗る前に階級までつけて呼ばれ、思わず背が伸びる。


< 106 / 279 >

この作品をシェア

pagetop