大和の風を感じて~運命に導かれた少女~【大和3部作シリーズ第1弾】
雄朝津間皇子
その後嵯多彦達(さたひこ)の消息は分からないと、葛城側かも連絡があった。
その為、またいつ何どき瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)の命を狙って来るかも分からない状況だ。

その為に宮の者達も日々妙な緊張感を持ちながら過ごしていた。

そしてそんな中、今度は皇子の身内からの訪問があると連絡が届いた。


「何でこんな時にやって来るんだ……」

瑞歯別皇子は部屋で一人やれやれと頭を抱えていた。

すると、皇子の家臣が彼の元にやって来た。

「皇子、弟君の雄朝津間皇子(おあさづまのおうじ)が到着されました」

「あぁ、分かった。ここに通して来れ」

瑞歯別皇子がそう伝えると、家臣は「分かりました。直ぐこちらにお連れします」と言って部屋を出ていき、しばらくして1人の少年を連れて戻って来た。

「兄上、お久しぶりです」

瑞歯別皇子の前に、その少年が座った。
見た目は11、12歳程の、まだ幼さの残る面影があった。

「雄朝津間、何でこんな時にやって来るんだ。危ないとは思わなかったのか」

住吉仲皇子の謀反や、嵯他彦の事件があった直後の為、皇子も何かと気が気でない。

「住吉仲の兄上の謀反があり、さらに先日は兄上自身も命を狙われたそうじゃないですか。
だから今後同じ事が起きないよう、僕自身は兄様2人と対立する気はないって伝える為、それでわざわざ来たんだよ」

雄朝津間皇子は、ちょっとむすっとしながら答えた。

「人を疑ったり、憎んだりする事もしないお前が、謀反なんて起こすとは誰も思ってない」

(第一それなら、こんな簡単にここに通したりはしないだろうに)
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