御曹司さまの言いなりなんてっ!
俺のことが好きだろう?

 ふと目覚めると、窓から差し込む日の光がすでに翳り始めていた。

 馴染みのない室内のせいで、瞬時には自分の置かれている状況が理解できない。

 ベッドの上でキョロキョロしながら、ああそうか、ここは三ツ杉村なんだとようやく理解した。


 どうやら、いつ間にかぐっすり眠ってしまっていたらしい。

 精神的にも肉体的にも大きな衝撃が続いたものなぁ。

 私はベッドに起き上がって両腕をウーンと伸ばしながら、まずは自分の体の具合を確認してみた。

 頭痛もないし、眩暈もない。手足の皮膚もカサついてる様子はないし、爪も綺麗なピンク色。

 よしよし、たっぷり水分を取って、ゆっくり休んだおかげで順調に回復したみたいね。


 立ち上がろうとして手をついた感触で、枕が氷枕に変わっていることに気がついた。

 いまどきのゲル式冷却枕じゃなくて、昔ながらの、氷を入れるタイプのゴム製枕にタオルが巻かれてある。

 懐かしい。子どもの頃に私が熱を出した時は、おばあちゃんが必ずこれを用意してくれたわ。

 もしかして部長が私のために用意してくれたのかしら。


 そこで私はある事にハッと気付き、慌ててベッドから立ち上がって、部屋を飛び出して隣の部屋をノックした。

「部長、部長、いらっしゃいますか?」

 すぐに扉が開いて、深みのあるインディゴのTシャツと色落ちジーンズの私服に着替えた部長が顔を出した。
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