イジワル上司と秘密恋愛
4・素直に蕩かして
【4・素直に蕩かして】


なんて言い訳しようと悩む間もなかった。

「ごめんなさい……この話は無かったことにして下さい。本当にごめんなさい」

一方的で理由も話さない最低な謝罪。私はそれを電話の向こうの木下くんに向かって紡ぐ。

綾部さんの目の前で。

『ちょっと待てよ! どういうことだよ!?』

喚くように問い詰める木下くんの声を遮るように通話を切り、さらにそのまま彼の番号を消す。

電話番号も、ラインIDも、メールアドレスも。

そうして『消去しました』とメッセージの出ているスマホの画面を見て、綾部さんはとても優しそうに目尻の垂れた切れ長の瞳を細めた。


「それでいいんだよ、志乃」

 
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