空っぽのイヤホン(仮)

Hot milk.

ノロノロと立ち上がった私は、重たい足取りで保健室へ向かう。

ドアを開くと、愛子先生はプリンターを弄ったり、珍しく仕事中。

こっちを見なくても、入ってきたのは私だってわかってるみたいだ。

「お腹痛い?」

「んーん。」

「…よし。おーわりっ。」

休憩しよ、と愛子先生が微笑むと
ふわりと花が舞うような気がする。

「あのね、具合悪いんじゃないの。」

「そうなの?よかった。
ホットミルクでいい?」

カチャカチャとマグカップをふたつ並べて、黄色のティーポットからは湯気が出ている。

保健室がいつも甘い匂いを漂わせているのは、この人が毎日休憩時にホットミルクを沸かすからだと知っていた。
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