空っぽのイヤホン(仮)
彼の少し濃い茶色みたいな髪は
透けるように柔らかそうだった。

あの髪に触れてみたい、と思った。

2年生だったら、私のいっこ下だ。


昼休み
1人の屋上でフルーツ牛乳を飲んでいたら
ふと、プールサイドに人影が見えた。

制服のまま
完璧なフォームでプールに飛び込む人。

パシャ、と滴が飛んで
夏の日差しでキラキラと輝く。

「綺麗……。」

綺麗だった、本当に。

透明の水の中でゆらゆらと泳ぐ人は
音楽のときに見た彼だった。
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