溺愛ドクターは恋情を止められない
第1章

救急外来の現実


空からはらはらと舞い降りる桜の花びらは、薄い薄いピンク色をしている。

最近、気温が高いせいで一気に満開となった桜は、春の若葉の匂いのする風に吹かれて、その花びらを空に舞わせる。
手を広げると、一枚だけ花びらが手のひらに乗った。


「よし。頑張るぞ」


私は、医療系の専門学校を卒業して、この春、社会人になった。

希望通り就職できない人も多かったけれど、一応専門知識があったおかげか、すんなり【野上総合病院】に、医療事務として採用された。
大学病院ほどの規模ではないけれど、四百床を抱える、ちょっとした市民病院ほどの大きさの総合病院。



私の母は、看護師だった。

だからなんとなく、小さな頃から医療に興味があったのだけど、致命的な欠陥が……。
血が怖いのだ。
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