バーフライズ・ストンプ
さかのぼること、3時間前。

「波田センセイのところに行ってきます」

そう声をかけた後、わたしは出版社を後にした。

センセイは出版社がある駅から2駅先のところにある住宅街に住んでいる。

築20年だと言う住宅の玄関のチャイムを押すと、
「はーい」

かわいらしいソプラノの声が聞こえた。

そうか、今は夏休みか。

そう思ったのと同時に、玄関のドアが開いた。

「あっ、津川さん、ご無沙汰しています」

わたしにあいさつをしてきたのは、センセイの姪っ子の野坂いちご(ノサカイチゴ)ちゃんだ。

彼女は高校1年生で、両親が県外へ赴任しているため、センセイのところで暮らしているんだそうだ。
< 13 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop