強引上司の溺愛トラップ

ときめく相手が出来ても、だからどうすることも出来ないのですが。

「という訳でね、新人の男の子が本当にカッコ良くて明るくて優しい素敵な子で……!」

帰宅後。
私は夕飯を食べながら、神くんとお母さんに一島くんのことを話していた。早太くんと日路くんはそれぞれの家に帰っていて、お父さんは今日も仕事で帰りが遅いので、いつも通りの三人での夕食だ。



「あらー。良かったじゃない、素敵な子が来て」

お母さんがまるで自分のことのようにニコニコと笑いながらそう言ってくれる。
だけど、やけに嬉しそうなので不思議に思っていると。


「嬉しいわあ〜、佐菜が男の子に興味を持ってくれたなんて!」

「え?」

お母さんは常日頃から『結婚はまだしなくていい。特に変な男には引っ掛かるな』と言っているから、思わず聞き返してしまった。


「だって、可愛い娘には恋をしてほしいって気持ちはあるもの!」

「え、恋⁉︎」

「しょうもない人が相手ならダメだけど、そんな素敵な人が相手ならお母さんも嬉しい!」


それに対して神くんが、
「しょうもない相手ってどんな人?」
と聞くと、お母さんは。


「家でダラダラしてるどうしようもない美容師とかかな」

「あっ、全国の美容師に謝れ!」

「美容師は素晴らしい職業です! 私が言ってるのは、アンタみたいな男とは付き合うなってことです!」

「俺の何がダメなの! 手に職があって、超イケメンだよ!」

「物申したいんなら自分でゴキブリを倒せるようになってからにしな」

そんな二人のやり取りを見ながら、私はしばらく笑ったり困ったりしていたけれど、不意にお母さんが。


「そうだ。課長さんはどんな人だったの?」

と聞いてきた。
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