契約結婚の終わらせかた番外編集
3年目~12月。 はじめてのクリスマス。



「あ~ぁ」

「うん、降ってきたね」


窓の外。朝から分厚い雲に覆われていた空から、ふわふわと落ちてきた白いもの。


初めて見るそれが珍しいのか、じっと空を見上げた後に手を伸ばそうとする。それでもガラス越しには掴めなくて、不機嫌そうな声を出す。


「ふふ、後で外に行こうね。でも、ちゃんと暖かくしないとダメだよ?」

「うきゅ~」


私が言ってることが解っているのか解らないのか、腕の中にいる我が家のお姫様はちょっぴりご機嫌ななめ。


このところ感情が豊かになったせいか、喃語(なんご)と全身でいろいろと気分を表してくる。今も、窓ガラスを軽く叩いて不満を述べてくるけれど。ダメだよと譲りません。


「だあめ。風邪を引いちゃうから。さ、ちゃんとあったかくしてお庭に出ようね」

「む~」


お姫様は不満そうだけれど、一度ベビーベッドに戻されて大人しくなった。その間に手早く服を準備して、いろいろと着せていく。


ベビーカーを用意してから抱き上げると、ずっしりとした重みに成長を感じて嬉しくなる。


「それじゃ、おはる屋に行こっか? みんなに遊んでもらおう」

「きゃ~ぅ」


“おはる屋”という単語にいち早く反応したお姫様は、上機嫌になって笑う。やっぱり解るんだな……って微苦笑して、隣にあるおはる屋へ足を運べば。子ども達がわっ! と集まってくれた。


「きゃあ、みどりちゃん久しぶり! またおっきくなった?」


中学生になった心愛ちゃんが慣れた様子で抱き上げるのは、私と伊織さんの初めての子どもであるみどり。


みんなから愛され、可愛がられる一人娘だった。


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