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何故か、そんな事をふいに思い出しながら、会社の廊下を歩いていた。

懐かしい、だけど苦い思い出。

「いいところに山根さん。助けてくださいませー」

段ボールを二つ抱えた後輩を振り返り、腰に手をかけると溜め息をついた。

「どうしてそんな無理するの」

「その方が早いかと思ったもので」

「却って効率悪そうだけれど?」

決して軽くはない段ボールを持ち上げて、観月さんを見た。

「腰を壊しちゃうわよ」

「あ、ありがとうございます。台車を借りれば良かったですね」

「まぁ、私も昔はよくやったけれどね。女の子が無茶しちゃだめよ」

「……でも、皆さん忙しそうですし」

「健康管理も秘書の務めです」

笑いながら言うと、段ボールを抱えて秘書課のドアの前で立ち止まった。

総合商社の秘書課に勤めて、すでに三年。古株のメンバーになりつつも、仕事はやり甲斐があって楽しい。

普段はお高く止まっている秘書課仲間も、仲間内ではどこか抜けていて可愛いものだ。

段ボールを肩に担ぎ直してドアを開けると、目の前に立っていた男子社員にぎょっとされる。

「山根さん! 何やっているんですか。観月さんも!」

「まぁ。荷物運んだだけよね。ところで観月さん。これなぁに?」

「総会のパンフです」

重いはずだわね。

「僕が持ちます」

テキパキと段ボールを引き取ってくれた彼にお礼を言っていると、また後ろからドアが開いて、今度は葛西主任が顔を出す。